千葉省三について



 千葉省三は、誰でもが知っているという童話作家ではないでしょうが、かつて、この人の全集のうちの一冊の絵を担当したことがあり、
それ以後私の好きな作家の一人となった人です。
 この作家は、子どもたちのありのままの行動と思いを生き生きと描きだした、おそらく日本で最初の人です。
 『鷹の巣とり』はなかでもすぐれた作品で、豊かな自然の中でせい
いっぱい躍動する子ども集団が魅力的です。そして、いかにも日本だというこの時代の子どもたちの風俗は、私が最も描いてみたい世界でも
あります。
 『五右衛門風』は、この作家のもうひとつの特質といえるお話の語り口のうまさをよくあらわした作品です。面白い話運びの中に、五右衛門という、時代よりも早過ぎて生まれてしまった人間の悲しさと、その男にそそぐ村人たちのあたたかいまなざしを感じさせます。
 この紙芝居がきっかけとなって、千葉作品に親しむ人が一人でも増えてくれればうれしいことです。

                          岡野 和

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